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パワコン不要の太陽光、「交流」でつなぐ蓄電池

2014年11月5日

太陽電池が生み出した直流電流をパワーコンディショナーで交流に変えて……。
国内のシステムでは大前提となっているこのような仕組みを「ひっくり返す」システム技術が、欧米で浸透し始めている。
パワーコンディショナーは使わない。直流を交流に変換する20cm角程度の装置「マイクロインバーター」を太陽電池モジュールごとに接続し、太陽電池モジュールからその場で交流を取り出すという方式だ(図1)*1)。
従来のパワーコンディショナーを集中制御だと考えれば、マイクロインバーターは分散制御に相当する。

図1 マイクロインバーターの考え方 出典:エリーパワー 掲載:ITmedia


図1のようなシステムにはどのような利点があるのだろうか。幾つもある。「もう少し電力が欲しい」という場合、太陽電池モジュールを1枚単位で増設 できる。1枚だけ大出力のモジュールを追加することも可能だ。モジュールの特性を合わせる必要がないからだ。このため、パワーコンディショナーを用いた場 合よりも、一般には得られる電力の量が多くなる。
太陽電池モジュールの故障や、影にも強い。故障したモジュール、影が当たったモジュールの出力だけが下がり、隣のモジュールは正常に動作し続ける。システム全体への影響が小さい。
設置工事も楽になる。もともと交流を通している宅内配線と接続しやすく、システム拡張がたやすい。マイクロインバーターにコンセントプラグが付いており、これを家庭用コンセントに差し込むだけで動作する製品もある。「プラグインソーラー」と呼ぶ。

設置スペースでも有利だ。パワーコンディショナーの専用スペースを用意する必要がないためだ。小ぶりな家屋ではありがたい。
ただし、マイクロインバーターにも「欠点」はある。太陽電池モジュールの数だけ装置を用意しなければならず、モジュールの枚数が多いと、パワーコ ンディショナーよりも割高になるのだ。しかし、次節で紹介するように米国市場では導入が進んでいる。これは初期コストとトータルの発電量を評価した結果だ といえるだろう。

◆米国市場がマイクロインバーターで突出
米国の調査会社であるIHSが2013年8月に発表した資料によれば、マイクロインバーター市場は米国に集中しており、2012年には世界市場のう ち、72%のシェアを占めたという。2013年には米国の住宅市場の40%がマイクロインバーターを採用しており、パワーコンディショナーが少数派に転落 する可能性が高い。

2017年のマイクロインバーターの世界市場は2.1GWまで成長する見込みであるという。これは2013年の約500MWと比較すると4倍の成長に相当する。

◆蓄電池をマイクロインバーターでつなぐ
こうした状況の中、マイクロインバーターの考え方を蓄電池にまで拡張しようとしている企業がある。米Enphase Energyだ。同社はマイクロインバーターを採用した太陽電池モジュールを、「双方向」マイクロインバーターを用いた蓄電池と組み合わせる(図2)。双 方向とあるのは、蓄電池には充電と放電の逆向きの電流の流れがあるからだ。同社が世界で初めて開発した技術であると主張する。双方向マイクロインバーター を備えた蓄電池を「Enphase AC Battery」と呼ぶ。

マイクロインバーターの利点は太陽電池モジュールと同じだ。工事が容易であり、必要に応じて蓄電池を増設しやすい。
同社は2015年下期にも図2のようなシステムを市場に投入する予定である。全てを交流で接続する「オールACアプローチ」を採る。マイクロイン バーターを備えた太陽電池モジュールと、双方向マイクロインバーター、蓄電池をパッケージ化した「分散型電力貯蔵システム」として提供することで、住宅内 のエネルギーマネジメントを最適化できるという。制御にはEnphase Energy Management Systemを利用する。
「図2にある運転制御盤は、太陽電池モジュールと蓄電池の状態を監視して制御する機能を備える」(エリーパワー)。

図1 分散型電力貯蔵システムの構成 家電を含め、機器同士を交流(ACケーブル)で接続する。
出典:エリーパワー 掲載:ITmedia

Enphase Energyはマイクロインバーターの開発・製造・販売に強みのある企業だ。だが、蓄電池技術はない。そこで、日本で蓄電池を開発・製造・販売するエリー パワーと戦略的提携の覚書を締結した。長期的かつグローバルな提携である。「覚書の詳細な内容は公表できないものの、例えば1年という短期間ではない。 Enphase Energyは世界市場に販売網を構築しているため、当社の蓄電池がそこに載っていく」(エリーパワー)。

エリーパワーは容量1.2kWhのリチウムイオン蓄電池モジュールをEnphase Energyに単独供給する*2)。 「新規開発品ではなく、当社が既に量産しているリチウムイオン蓄電池セルを組み合わせて供給する。国内では4セルを1モジュールに組み上げているものの、 Enphase Energy向けには8セルを使う」(エリーパワー)。Enphase Energyによれば蓄電池からの出力は275Wもしくは550Wになるという。

「図2には4枚の太陽電池モジュールと4個の蓄電池が組みになって描かれているものの、実際のシステムでは太陽電池モジュールと蓄電池の数は1対 1ではない。米国市場では4~5枚の太陽電池モジュールと3~5台の蓄電池を組み合わせることが一般的だろう。太陽電池モジュールを1枚増設したとき、蓄 電池の数はそのままでよいことも多い」(エリーパワー)。

日本市場に分散型電力貯蔵システムが導入されるのはいつなのだろうか。エリーパワーの発表資料には、同社社長の吉田博一氏のコメントとして「分散 型電力貯蔵システムは米国のみならず、日本を含めた世界のエネルギー問題の解決に貢献していくものと確信しています」という発言が掲載されている。

掲載元: ITmedia

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